2026.08.15 230 9
余白の海
[Intro]
頁(ページ)をめくる音だけが
こんなに広い部屋を
少しずつ
遠くしていく
[Verse 1]
知らないことを知りたくて
ひとつ またひとつ 積み上げた
誰かが生きた百年を
午後のひかりで読み終えた
戦争も 恋も 星の距離も
名前を覚えれば近くなる
なのに窓辺の風ひとつ
うまく説明できなかった
本は答えをくれるけど
答えの数だけ
問いが増える
[Pre-Chorus]
読めば読むほど
遠くなる
わかればわかるほど
わからなくなる
それでも今日も
栞(しおり)を挟む
ここまで来たと
忘れないように
[Chorus]
余白の海を
泳いでゆく
言葉と言葉の
あいだをゆく
正しさだけじゃ
渡れない
名もない気持ちを
抱いたまま
頁をめくって
また迷う
迷ったぶんだけ
世界はひらく
知ることだけが
答えじゃないと
知るためにまた
本を読む
[Verse 2]
積み上げすぎた物語が
いつしか壁になっていた
昨日の私を守るため
覚えた言葉も多すぎた
幸福(こうふく)とは
孤独(こどく)とは
自由とは
未来とは
どれも綺麗に書いてあるのに
あなたが泣いたあの夜だけ
何を言えばいいかわからない
辞書を閉じれば
聞こえてきた
呼吸の音が
ひとつ
[Pre-Chorus]
言葉になるもの
ならないもの
残るもの
消えてゆくもの
読めない頁も
破れた頁も
きっと物語の
一部なんだ
[Chorus]
余白の海を
泳いでゆく
昨日と明日の
あいだをゆく
遠くへ行くほど
わかってく
世界は地図より
広いこと
頁をめくって
また戻る
同じ一行が
違って見える
本が変わった
わけじゃない
変わっていたのは
私だった
[Bridge]
もしもすべての本を読んで
すべての名前を覚えて
すべての問いに
答えられたら
私はもう
迷わないのかな
それとも
迷わないことを
少しだけ
寂しいと思うのかな
積み上げた本の向こうから
夕暮れが差し込んで
知らない色で
床を染めた
それだけで
今日は
十分だった
[Final Chorus]
余白の海を
泳いでゆく
答えの岸を
探さずにゆく
わからないまま
愛せること
知らないままでも
歩けること
頁をめくって
風を待つ
物語よりも
長い今日を
読み終えないで
生きてゆく
私自身も
未完(みかん)のまま
知ることと
生きることは
たぶん少し
違うから
それでも私は
頁をめくる
[Outro]
栞を挟んで
本を閉じる
窓の向こうは
まだ
読んだことのない
夕焼けだった
クリックで全画面再生(音が出ます)。HOOKは動画に楽曲音声を重ねて再生します