2026.07.16 642 7
あの曲の続きだ Live
音楽を辞めて社員証を選んだ側から見た、雨の夜のライブハウス。十年間も火を消さずに運ばれてきた曲の前で、書きかけだったサビ四行の空白が突き刺さる。抑えた語りから生バンドの慟哭へ開く78BPMのバラード。
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歌詞
[Intro (rain ambience, clean guitar arpeggio, quiet)]
[Verse 1 (restrained, almost spoken-soft)] 傘も差さずに帰る金曜 地下から滲んでた ベースの音 聴き覚えなんて言葉じゃ足りない ——あれは 私の左手だ
階段を三段降りて 迷って 二段戻って また降りた ドアの隙間の熱気の向こう あんたはまだ あの位置に立ってた
[Pre-Chorus] 客は二十人 いや十七(じゅうしち) 数えてしまう癖(くせ)は 仕事のせい 「そういうとこだよ」って 十九の私が 舌(した)を出す
[Chorus (band swells)] あの曲の続きだ 私が置いて出た夜の 書きかけのサビが 知らない言葉で 完成してる
止まってたのは 曲じゃなくて 私のほうだ 口が勝手に動いてしまう 歌詞も 知らないくせに
[Verse 2 (quiet again)] 辞めた理由なら言える 三つくらい どれも正しくて どれも嘘 母の顔とか 家賃(やちん)の額(がく)とか あんたの才能を 間近(まぢか)で見たこと、とか
社員証は軽い ギターより ずっと軽い 重さで選んだはずなのに 軽いほうが 肩に食い込むのは なんでだ
[Pre-Chorus 2] MCで 昔の話はやめてよ 祈る私に マイク越し 「今日は なんか、来てる気がする」って ——笑うなよ そんな顔で
[Chorus 2] あの曲の続きを あんたはひとりで抱えてた 十年 火を消さないまま ここまで 運んできたんだ
正しさで選んだ道には 火の気がなくて 私は今 借り物の熱で かじかんだ手を あぶってる
[Bridge (drums drop out, bass and piano, memory)] 十九の夏 ファミレスで ドリンクバー六時間 「売れたら武道館(ぶどうかん)」って 馬鹿みたいに 本気だった 本気だったんだよ
ノートの最後のページ サビの四行(よんぎょう)だけ 空白で 「ここはお前が書けよ」って あの宿題 まだ返してない
[Final Chorus (full band, raw)] あの曲の続きは もう私の出番じゃない 「それでいい」と言うには 喉(のど)の奥が まだ熱すぎる
最後の音が消える前に 逃げるように階段へ でも三段目で 足が止まる 拍手(はくしゅ)が 鳴り止まない
アンコールの声に 振り返ってしまった あの空白の四行(よんぎょう)を 歌える人間に なりたかった
[Outro (quiet, rain returns, single guitar)] 終電の窓 雨の線 口ずさんでる 続きのメロディ 歌詞はまだ 空白のまま ——空白のまま まだ熱い
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