2026.08.15 230 9

余白の海

本を読むほど問いが増える、という手触りを描いた室内楽ポップ。フェルトピアノとチェロが午後の図書室の光ごと持ち上げ、囁くようなボーカルが「わからないまま愛せること」へ辿り着く。積み上げた物語がいつしか壁になっていたと気づく2番から、答えの岸を探さずに泳ぐ結びまで、92BPMのまま静かに視界がひらいていく。

#literary japanese art pop#chamber pop#cinematic indie ballad#delicate female vocal

⚔ この曲の外典に挑む

クリックで全画面再生(音が出ます)。HOOKは動画に楽曲音声を重ねて再生します。

歌詞

[Intro]

頁(ページ)をめくる音だけが

こんなに広い部屋を

少しずつ

遠くしていく

[Verse 1]

知らないことを知りたくて ひとつ またひとつ 積み上げた

誰かが生きた百年を 午後のひかりで読み終えた

戦争も 恋も 星の距離も 名前を覚えれば近くなる

なのに窓辺の風ひとつ うまく説明できなかった

本は答えをくれるけど

答えの数だけ

問いが増える

[Pre-Chorus]

読めば読むほど 遠くなる

わかればわかるほど わからなくなる

それでも今日も 栞(しおり)を挟む

ここまで来たと 忘れないように

[Chorus]

余白の海を 泳いでゆく

言葉と言葉の あいだをゆく

正しさだけじゃ 渡れない

名もない気持ちを 抱いたまま

頁をめくって また迷う

迷ったぶんだけ 世界はひらく

知ることだけが 答えじゃないと

知るためにまた

本を読む

[Verse 2]

積み上げすぎた物語が いつしか壁になっていた

昨日の私を守るため 覚えた言葉も多すぎた

幸福(こうふく)とは 孤独(こどく)とは

自由とは 未来とは

どれも綺麗に書いてあるのに

あなたが泣いたあの夜だけ 何を言えばいいかわからない

辞書を閉じれば

聞こえてきた

呼吸の音が

ひとつ

[Pre-Chorus]

言葉になるもの ならないもの

残るもの 消えてゆくもの

読めない頁も 破れた頁も

きっと物語の

一部なんだ

[Chorus]

余白の海を 泳いでゆく

昨日と明日の あいだをゆく

遠くへ行くほど わかってく

世界は地図より 広いこと

頁をめくって また戻る

同じ一行が 違って見える

本が変わった わけじゃない

変わっていたのは

私だった

[Bridge]

もしもすべての本を読んで

すべての名前を覚えて

すべての問いに

答えられたら

私はもう

迷わないのかな

それとも

迷わないことを

少しだけ

寂しいと思うのかな

積み上げた本の向こうから

夕暮れが差し込んで

知らない色で

床を染めた

それだけで

今日は

十分だった

[Final Chorus]

余白の海を 泳いでゆく

答えの岸を 探さずにゆく

わからないまま 愛せること

知らないままでも 歩けること

頁をめくって 風を待つ

物語よりも 長い今日を

読み終えないで 生きてゆく

私自身も

未完(みかん)のまま

知ることと

生きることは

たぶん少し

違うから

それでも私は

頁をめくる

[Outro]

栞を挟んで

本を閉じる

窓の向こうは

まだ

読んだことのない

夕焼けだった